<2月11日(水)掲載>
AR50さんの感想を読んで、これは是非観なければと、予定を変えてこれを鑑賞。
タイトルの“Woman in Gold”は一枚の絵画のことで、『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』と呼ばれている作品のこと。アデーレ・ブロッホ=バウアーを描いた絵が5枚存在することろからこの呼び方になったようだ。
この映画は、AR50さんの説明にもあるように、第二次世界大戦中にナチスに持ち去られた絵画が本来持っているべき人物の元へと戻されるまでを描いた作品。
先日べるりんねっと789のTODAYのコラムにも、ザルツブルクの美術館が返還を決定したナチ時代の略奪美術品について触れたが、一般に“Raubkunst/ラウプクンスト(ナチの略奪美術品)“と呼ばれ、絵画に限らず、美術工芸品や貴金属、また楽器までも含まれ、その数は膨大。
今回の作品で興味深いのは、「高いお金を払って買ったものだったのだから返して」というのではなく、主人公のマリア・アルトマンは、『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像』の被写体となったアデーレの姪っ子に当たる人物ということだ。
ようするにアデーレの家族に実際に起きたことを「1枚の絵の返還」という切り口で描き出した作品。
アデーレが着けている首飾りは、のちにマリアがアデーレから譲り受ける。そのシーンなどはゾクゾクするほど美しい(この首飾りも奪われ、映画によると、これは戻ってこなかったようだ)。
当時のウィーンの富裕層たちの生活ぶりを垣間見せながら残酷な終末へと加速していく。
絵画返還を巡るあれこれと、マリアがふと回想する当時のようすがうまく織りなされ、終盤、あるときから会場のあちこちから鼻をすする音がし始め、あるシーンからは誰もが涙を拭っていた。
路上で繰り広げられるユダヤ人迫害のシーンも控えめで、虐殺シーンもでてこない。押しつけがましい描写がないだけに、心にずしんとくる。
華やかで悲しく、ときに心温まる作品。
一般映画館で公開される日が待ち遠しい。 |