六草いちかの映画鑑賞メモ

六草いちかの映画鑑賞メモ

 

泣けた! :泣けた! 笑えた! :笑えた! ジン・・・ときた :ジン・・・ときた
カワイイ~! :カワイイ~! コッワ~ :コッワ~ 考えさせられます :考えさせられます
かなりオススメ! :かなりオススメ! なかなかオススメ! :なかなかオススメ! DVDも買いたい! :DVDも買いたい!
是非大スクリーンで! :是非大スクリーンで! 映画史に残る! :映画史に残る! 私向きではなかったようで・・・ :私向きではなかったようで・・・
もうしわけございません! :・・・モウシワケゴザイマセン!    

使用画像 : 映画製作会社および配給会社 (転載厳禁)

 

この映画評は、「べるりんねっと789」のベルリン国際映画祭特集に掲載されたものです。
第65回2015年版

 

天の茶助
Chasuke’s Journey
Wettbewerb

監督: SABU
出演: 松山ケンイチ、大野いと、大杉漣、伊勢谷友介、玉城ティナ、寺島進 ほか
オリジナル言語: 日本語
2014年/日本・フランス/106分

 SABU監督が『うさぎドロップ』に続いて松山ケンイチとタッグを組んで、自身が執筆した小説を映画化。
 地上で生きる人間たちの“人生のシナリオ”を書く脚本家が生活する天界でお茶くみを担当している主人公・茶助が、事故死する運命にある女性に好意を持ったことから彼女を助けるべく地上で奮闘する様を描 く。大野いとがヒロイン役を演じる。(@ぴあ映画生活より)

公式サイト : http://www.chasuke-movie.com/


泣けた! 笑えた! カワイイ~! コッワ~ 考えさせられます かなりオススメ! DVDも買いたい! 是非大スクリーンで!
寄稿: 六草いちか

<2月15日(日)掲載>

 天界はけっこう慌ただしい。
 夥しい数の脚本家たちが、巻紙の上に屈みこみ、墨をたっぷりと含ませた筆を一心に動かしている。この世に生きる人々の人生の脚本をしたためているのだ。
 天空の脚本家たちは、「あのお方」の指示の元、筆をふるうのだが、「あのお方」はときおり姿を現すだけで、その指示も懇切丁寧とは言えない。漠然とした「お題」を下して去ってゆく。
 そこで脚本家たちは、お題から想像できる最善を尽くして、自分の手掛ける主人公を描く。
 そして私たちこの世に生きる人々は、この天界の脚本家たちの書いた筋書きに沿って生きている。
 このたびまた「あのお方」がお現われになり、お題をお下しになり消えていかれた。
 今回はたった一言で、そのうえ明確に聞き取れなかった。
 斬新? アバンギャルド?? 脚本家たちは大騒ぎ。
 このお題がきっかけで、天空の脚本家たちの筋書きに微妙な変化が生じていった。それが連鎖し、ユリが危機を迎える。
 これにショックを覚えたのは、ユリを担当していた脚本家と、執筆中の脚本家たちに茶をもてなす茶番頭の茶助。茶助はユリの愛らしさに密かに好意を抱いていたのだ。
 …と、天界の茶番頭・茶助が、定めの運命のほんの一瞬の部分だけを変えようと奮闘する物語。
 主演松山ケンイチさんの演技の素晴らしさは、ベルリンでは昨年の参加作『家路』で十分実証済みだが、今回もその実力をあますところなく発揮していた。
 ユリを演じる大野いとさんは主演への大抜擢とのことだが、自身の持つ透明感とピュアな心を大いに駆使し、ユリという人物像を魅力的に創り上げていた。
 「数分に一度は笑えます」という謳い文句が付いていてもおかしくないほど、ユーモラスな仕掛けがたっぷり。それでいて、生きるということはどういうことなのかを、ふと考えさせてくれる。そしてアクションもあり、今回は沖縄を舞台に鮮やかなシーンづくりも眼を見張る、充実の逸品。SABU監督ヤッタ~!

 日本での公開は6月。DVD発売となると、まだまだ先の話。
 これでは伸びた首も折れて曲がってしまうので、ドイツでの劇場公開を願うばかり。
 配給会社の担当者を主人公に書く脚本家さん、海外向け渉外はFilms Boutiqueが担当らしいです。よろしくです。

 

以下の記事は、2015年2月15日にべるりんねっと789のコラムに掲載されたものです

 「天の茶助」は予想をはるかに上回る愉快でハートフルな作品だった。
 あまりに素晴らしい作品だったので、もう一度観たい観たい~と思っていたら、願いが叶って、本当にもう一度観ることに。私のことを書いている脚本家さん、ちょっと筋書きを変えてくれた??(→作品をご覧になった人には分かる意味)
 15時から始まったFriedrichstadt-Palast/フリードリッヒ・シュタットパラスト劇場に上映開始の寸前に滑り込む。1895席という巨大ホールだが、会場は観客で埋め尽くされ壮観な眺め。
 美しいシーンも数多く、テンポよくストーリーが進む。ときに怒涛のごとく笑いが巻き起こりながらあっという間の106分。
 もう二度目だから分かっているはずのクライマックス、それでもやはり感極まって、ううぅ…。せっかくのお化粧がまた取れた。
 物語が完結し暗転すると沸き上がった拍手。しばらく続く大喝采。エンドロールが流れてしばらく経ってもほとんどの人がそのまま席に残り、最後の最後にSABU監督の名が映し出されエンドロールが終わった瞬間に再度拍手喝采。「ブラボー!」とどこかから声が上がったのがきっかけに、あちこちからブラボーコールが巻き起こり、さらに拍手が大きくなったのでビックリ。
 どういうわけか、「天の茶助」の再上映はすべて14日に行われ、15時からはここだけでなく、Haus der Berliner Festspiele/ベルリナー・フェストシュピーレ会館でも同時上映されていた。
 べ志さんはこちらで観ていたそうで、こちらも満席で、同じように観客もノリノリで、SABUワールドを楽しんでいたそうだ。
 シュタットパラスト劇場は1895席、フェストシュピーレ会館は986席。延べ2800以上にもおよぶ。前日に公式ホールでプレミエ上映がなされ、翌日にこれだけの席を客で埋め尽くすというのは、誰にでもできることではない。
 「弾丸ランナー」、「アンラッキー・モンキー」、「MONDAY」、「幸福の鐘」、「ハードラックヒーロー」、「疾走」、「蟹工船」、そして今回の「天の茶助」。ベルリン国際映画祭、若手監督作品が対象となるフォーラム部門から始まって、実に8回目の参加。ベルリンっ子にファンを多く持つSABU監督だからなしえた動員だ。
 そのうち金熊賞を手に「やったぜ~」と笑顔を見せてくれることだろう。
 そのためにも、カンヌやベネチアに浮気しないで、ベアリナーレの締め切りに焦点を絞って制作に取り掛かってね~SABU監督!

 

 

 

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