<2月7日(土)掲載>
テヘランの町を走るタクシー。
乗合タクシーとでもいうのか。入れ代わり立ち代わり乗客が乗り込んでくる。
車内で繰り広げられる意外な話や意外な展開。しかしどこかでありそうな。しかしそうなるかい~。
ハンドルを握る運転手さん、始終笑顔で、料金も「いいよ」と取らないことがしばしば。人が良すぎる。なんと、この運転手さんジャファール・パナヒ監督ご自身なのだそうだ。
パナヒ監督はイラン政府に映画の作風が国民に良くない影響を与えると逮捕されたこともあり、現在も映画製作は禁じられている身なのだそうだ。
そこで彼が行ったのは、タクシー車内に3つのミニカメラを取り付けての小さな空間での撮影。
フィルムも密輸に近い状態で映画祭に送ったらしい。
私の見たのはプレス試写。
世界中から集まった映画ジャーナリスト3700人のうちの1600人(メイン会場は1600席で満席状態だった)が一堂に会している。良くない作品だとブーイングが飛び交うし、つまらない作品だと見切りをつけて席を立ってしまう。なかなか厳しい(素直)状況のなかでの上映だ。
しかし上映終了直後、大喝采となった。
プレス用資料の中に、政府にどう制限されようとも自分には映画を作ることしかできないとコメントしていたパナヒ監督。
その監督魂への最大の敬意が拍手となった。監督自身はベルリンに来ることさえできない身だけれど。 |