<2月8日(土)掲載>
ジャックは10歳。てきぱきとよく動き、弟マヌエルの面倒をよく見る。弟にとっては、兄が母親なのではないかと思えるくらい、弟の面倒を実によく見ている。
ジャックとマヌエルの母親はシングルマザー。ジャックとマヌエルは見た目がかなり違う。もしかするとこの二人の父親は別の人なのかもしれない。
母親は、日中は仕事に出かけ、夜はボーイフレンドと出かけることも多い。
もともと父不在の家庭で、母親までもが不在気味。それでジャックはマヌエルにとって、「父親」であったり「母親」であったりするのだ。
そしてあるとき、マヌエルの怪我が原因で、母親が子どもの面倒をきちんと見ていないことが役所にばれてしまい、ジャックは施設に、マヌエルは母親の友人宅に引き取られることになる。
一時帰宅が許される「休暇期間」がもうすぐやってくる。また家族3人で一緒になれることを楽しみに、その日が来るのを指折り数えて待っていたジャックだったが、母親から電話があり、帰宅の日を3日延ばしてほしいと言われる。
一度は仕方がないと思っていたが、どうしても母親に会いたくなり、施設を無断で抜け出して、帰宅するが母親はいない。そこでマヌエルと一緒に母を探し始める…。
「母をたずねて三千里」ではなく「三日間」という物語。
観終えた直後の感想。「ジャックはいい子だ」
これ以外、浮ばなかった。たまたま会場で出会った知り合いに感想を聞かれても、「ジャックはいい子だ」といったきり絶句するしかなかった。
現代のひとつの家族像を描いた作品。痛い箇所も多い。
„Kumiko“は、典型的なフォーラム部門参加作品だが、この“Jack“は典型的なコンペ部門参加作品だ。
一般の映画館でメガヒットを打ち出したりはしなさそうだが、映画祭では好まれる内容といえるだろう。
幕を閉じる寸前のジャックの表情、あるいみ衝撃が走った。
子どもの頃の環境は、その子の将来に大きく影響する。
ジャックはいい子だ。ジャックは逆境をバネに、よい大人になっていくだろう。心配なのは弟のマヌエルだ。作中でのマヌエルはひたすらカワイく、申し分ないが、このまま大人になったら…と思うと、この子の将来が非常に気にかかる。架空の「映画作品」であるのがせめてもの幸いだ。しかし、こういった環境に生きる子達は、日本にもドイツにもたくさんいるのだろうなあ…。
と、いろいろ考えさせられた作品。
映画としては、このジャック役の男の子、この子の演技力に大絶賛。
カメラマンにはひとこと言いたい。
もちっと引いて撮ってもらえませんかね…。画面いっぱいに映し出される登場人物たちを巨大なスクリーンで見るのはけっこう大変。観始めは「船酔い注意報」が出ていた。 |